「相続財産のほとんどが不動産なのに、相続税をどうやって払えばいいのか…」そんな悩みを抱えていませんか?
特に足立区のような都市部では、地価の上昇により予想以上の相続税が発生し、納税資金の確保に頭を悩ませる経営者の方が増えています。現金の代わりに不動産などを納める「物納」という制度がありますが、実はこの制度、申請件数が年々減少し、令和2年度はわずか53件しか許可されていない「難しい」制度なのです。
なぜ物納はこれほど難しいのでしょうか?延納との違いは?どんな財産なら物納できるのか?本記事では、相続税の物納制度について、その厳しい要件から具体的な手続き、そして物納が困難な場合の代替手段まで、足立区の税理士の視点から詳しく解説します。
この記事を読めば、あなたの相続税納付の選択肢が明確になり、最適な納税方法を見つけるための道筋が見えてくるはずです。
相続税の物納とは何か?延納との違いと「難しい」と言われる背景
相続税の納付に頭を抱える経営者の方も多いのではないでしょうか。特に足立区のような都市部では、不動産価格の上昇により、思いがけず高額な相続税が発生するケースが増えています。
相続税は原則として現金で一括納付することが定められています。しかし、相続財産の大部分が不動産や非上場株式などで占められている場合、納税資金の確保が困難になることがあります。このような状況に対応するため、税法では延納と物納という特別な納付方法を認めています。
延納は相続税を分割して支払う制度で、最長20年間の年賦払いが可能です。一方、物納は現金の代わりに相続財産そのものを国に納める方法です。両制度の大きな違いは、延納があくまで金銭での分割納付であるのに対し、物納は財産そのものを納付する点にあります。
物納が難しいとされる背景には、いくつかの要因があります。まず、物納は延納によっても納付が困難な場合の最終手段として位置づけられており、要件が非常に厳格です。さらに、平成18年の税制改正により物納要件が明確化・厳格化されたことで、申請件数は激減しました。平成13年には4,844件あった物納許可件数が、令和2年にはわずか53件にまで減少している状況です。
また、物納できる財産には順位があり、管理処分不適格財産や物納劣後財産に該当しないなど、多くの制限があります。これらの要件を満たすためには、事前の準備と専門的な知識が不可欠となり、多くの納税者にとってハードルが高い制度となっているのが現状です。
相続税の物納手続きと申請要件の難しさ
延納しても金銭納付が困難であること
物納制度を利用するための最初のハードルは、延納によっても金銭納付が困難であることを証明しなければならない点です。この判断は単に相続財産に現金が少ないという理由だけでは認められません。
税務署は納税者の財産状況を詳細に調査します。相続人全員の預貯金はもちろん、金融機関への照会も行われ、一括納付できる資産があるかどうかが確認されます。生活費として認められる金額は月額で本人10万円、家族1人あたり4万5千円という厳しい基準が設定されており、それ以外の収入は基本的に納税に充てることが求められます。
物納が認められる金額は、相続税額から相続した預貯金、納税者自身の預貯金、生活費3か月分、事業経費1か月分、経常収支による納税資金、臨時的収支を差し引いた金額に限定されます。この計算は複雑で、専門的な知識なしに正確に算出することは困難です。
さらに、将来の収入見込みも考慮されます。給与収入や家賃収入など、継続的な収入がある場合は、それらを延納による分割払いに充てることが優先されます。つまり、物納は本当に他に手段がない場合の最後の選択肢として位置づけられているのです。
対象財産は順位・所在等の要件を満たす必要あり
物納に充てることができる財産には厳格な順位が定められています。第1順位は国債、地方債、不動産、船舶、上場株式等です。第2順位として非上場株式等、第3順位として動産が指定されています。
重要なのは、上位順位の財産がある場合、下位順位の財産を物納に充てることは原則として認められない点です。例えば、相続財産に不動産がある場合、その不動産が管理処分不適格財産でない限り、非上場株式を物納することはできません。
また、物納財産は日本国内に所在することが必要です。海外資産は物納の対象外となり、現金化して納付する必要があります。この要件により、海外に多くの資産を持つ相続人にとっては、物納制度の利用がさらに困難になっています。
物納財産の価額は相続税評価額で計算されます。不動産の場合、市場価格よりも低い路線価等で評価されるため、実際の価値よりも低い金額でしか納税に充てられません。特に小規模宅地等の特例を適用した土地の場合、80%減額後の評価額での物納となるため、経済的に不利になるケースが多くなります。
申請書類・期限・現地調査などの手続き
物納申請の手続きは非常に複雑で、多くの書類の準備が必要です。物納申請書と物納手続関係書類を相続税の申告期限である相続開始から10か月以内に提出しなければなりません。
必要書類は物納する財産の種類によって異なりますが、不動産の場合は登記事項証明書、固定資産税評価証明書、公図、測量図、境界確認書など多岐にわたります。特に境界確認書の取得は隣地所有者との協議が必要となり、時間と労力を要する作業となります。
税務署は物納申請を受けると、原則として3か月以内に許可または却下の判断を行います。ただし、財産の状況によっては最長9か月まで延長される場合があります。この審査期間中も利子税が発生するため、申請者にとっては大きな負担となります。
現地調査も実施され、物納財産の現況が詳細に確認されます。建物の場合は違法建築でないか、土地の場合は境界が明確か、土壌汚染がないかなど、多角的な調査が行われます。これらの調査で問題が発見された場合、物納申請は却下される可能性が高くなります。
相続税で物納が難しいとされる財産の例と注意点
管理処分不適格財産の判定
管理処分不適格財産とは、国が管理や処分を行うことが困難または不適当な財産を指します。これらの財産は物納に充てることができません。
代表的な例として、担保権が設定されている不動産があります。抵当権や根抵当権が設定されている土地や建物は、債権者の権利が優先されるため、国が自由に処分することができません。物納を検討している場合は、事前に担保権を解除するか、別の財産に差し替える必要があります。
境界が明確でない土地も管理処分不適格財産に該当します。隣地との境界確認ができていない土地は、将来的に紛争の原因となる可能性があるため、物納が認められません。境界確定には隣地所有者全員の同意が必要で、時間と費用がかかる作業となります。
権利関係に争いがある不動産も対象外です。相続人間で遺産分割協議が整っていない財産や、第三者との間で所有権について係争中の財産は物納できません。また、共有持分の不動産も、他の共有者の同意が得られない限り、物納は困難です。
土壌汚染や廃棄物が埋設されている土地、アスベストを含む建物なども管理処分不適格財産となります。これらの財産は処分前に多額の費用をかけて改善する必要があり、国にとって負担が大きいためです。
物納劣後財産の具体例
物納劣後財産は、他に物納に適した財産がある場合には物納できない財産です。管理処分不適格財産とは異なり、絶対的に物納できないわけではありませんが、優先順位が低い財産となります。
地上権や永小作権、耕作を目的とする賃借権が設定されている土地は物納劣後財産に該当します。これらの権利が設定されていると、土地の利用に制限があり、売却が困難になるためです。ただし、借地権が設定されている貸宅地については、通常の第1順位財産として扱われる点に注意が必要です。
違法建築物とその敷地も物納劣後財産となります。建築基準法に違反して建てられた建物は、是正命令の対象となる可能性があり、国が管理する上でリスクが高いと判断されます。増改築により違法状態となった建物も同様の扱いとなります。
納税義務者が現在居住している建物とその敷地、事業用に使用している建物とその敷地も物納劣後財産です。ただし、納税義務者自身がこれらの財産の物納を申請する場合は例外となります。生活や事業の継続に支障をきたす可能性があるため、このような配慮がなされています。
建築基準法上の道路に2メートル以上接していない土地、いわゆる無道路地や旗竿地の一部も物納劣後財産となります。これらの土地は建物の建築が制限され、売却も困難なことが多いためです。
相続税における物納のメリット・デメリットとその難しさ
デメリット:評価差損・却下リスク・利子税など
物納制度の最大のデメリットは、財産を相続税評価額で納付しなければならない点です。不動産の場合、市場価格と相続税評価額には大きな差があることが多く、実勢価格の7〜8割程度の評価となることが一般的です。
特に深刻なのは、小規模宅地等の特例を適用した土地の物納です。特例により80%減額された評価額での物納となるため、時価1億円の土地でも2,000万円分の納税にしかならないケースもあります。このような場合、売却して現金化した方が有利になることがほとんどです。
物納申請の却下リスクも無視できません。申請から許可までの審査期間中も利子税が発生し続けます。仮に申請が却下された場合、それまでの期間の利子税は納税者の負担となります。却下後に延納申請に切り替えることは可能ですが、時間的なロスと追加の利子税負担は避けられません。
手続きの複雑さと専門性の高さも大きなデメリットです。必要書類の準備、境界確定、現地調査への対応など、一般の納税者が独力で進めることは極めて困難です。税理士等の専門家に依頼する必要があり、その費用も相当額になります。
物納許可後のリスクもあります。物納許可から5年以内に土壌汚染などの瑕疵が発見された場合、汚染除去などの措置を求められ、対応できない場合は物納許可が取り消される可能性があります。このような不確実性も、物納制度利用の大きな障壁となっています。
相続税の物納が難しい場合に考えるべき対策・代替手段
売却・融資による納税資金確保
物納制度の利用が困難な場合、最も現実的な選択肢は相続財産の売却による納税資金の確保です。不動産を市場価格で売却すれば、相続税評価額よりも高い金額で現金化できる可能性が高くなります。
売却を検討する際は、まず複数の不動産会社から査定を取ることが重要です。特に足立区のような都市部では、立地や開発可能性によって査定額に大きな差が出ることがあります。急いで売却すると買い叩かれるリスクがあるため、相続税の申告期限を見据えた計画的な売却活動が必要です。
金融機関からの融資も有効な選択肢です。相続した不動産を担保に融資を受け、納税資金を確保する方法です。将来の家賃収入や給与収入で返済していくことができれば、資産を手放さずに済みます。ただし、返済計画は慎重に立てる必要があり、無理のない範囲での借入れに留めることが大切です。
延納制度の活用も再検討すべきです。物納よりも要件が緩やかで、最長20年の分割払いが可能です。延納利子税はかかりますが、市中金利よりも低い場合が多く、計画的な返済が可能であれば有効な選択肢となります。
相続税の納付方法は、個々の状況により最適な選択が異なります。相続財産の構成、相続人の収入状況、将来の資金計画などを総合的に判断する必要があります。特に物納制度は要件が厳しく手続きも複雑なため、早い段階で税理士などの専門家に相談することが重要です。足立区で相続税にお悩みの経営者の方は、地域の実情に詳しい税理士に相談し、最適な納税方法を検討することをお勧めします。
相続税の物納が難しいとされる理由のまとめ
相続税の物納制度は、現金での納付が困難な場合の最終手段として位置づけられていますが、その利用は年々難しくなっています。物納が認められるためには、まず延納でも納付が困難であることを証明し、さらに物納財産が厳格な順位や要件を満たす必要があります。
足立区のような都市部では、相続財産の多くが不動産で占められるケースが多いものの、物納では相続税評価額での納付となるため、市場価格よりも大幅に低い金額でしか納税に充てられません。特に小規模宅地等の特例を適用した土地では、評価額が80%減額されるため、経済的に不利になることがほとんどです。
管理処分不適格財産や物納劣後財産など、物納できない財産の種類も多く、境界確定や担保権の解除など事前準備も必要です。これらの複雑な要件と手続きにより、物納申請は専門知識なしには困難で、税理士への相談が不可欠となっています。物納が難しい場合は、不動産の売却や融資による納税資金の確保、延納制度の活用など、代替手段を検討することが重要です。
| 項目 | 延納 | 物納 |
|---|---|---|
| 納付方法 | 現金の分割払い(最長20年) | 相続財産そのものを納付 |
| 利用要件 | 一括納付が困難な場合 | 延納でも納付困難な場合 |
| 財産の評価 | - | 相続税評価額(市場価格より低い) |
| 主な制限 | 担保提供、利子税の負担 | 財産の順位、管理処分不適格財産の除外 |
| 申請期限 | 相続開始から10か月以内 | 相続開始から10か月以内 |
